研究概要 |
インドネシアにおいて,世帯主の教育年数が世帯消費支出に及ぼす影響を見るため,中部ジャワ農村,中部ジャワ都市,ジャカルタの地域別に教育の収益率を計測すると,貧困世帯を削減する方策として,教育レベルの向上が非常に重要であることが明らかになった。地域別に見ると,教育の収益率は中部ジャワ農村より中部ジャワ都市で大きく,さらにジャカルタでより大きくなっていた。しかし,同じ地域においても就業セクター別に収益率を計測すると,セクターにより大きく異なる。中部ジャワ農村では商業が一番低く,次に農業,サービス業と続き,製造業が一番高くなり,一番低い商業と最も高い製造業の差は著しく大きい。中部ジャワ都市およびジャカルタを見ると,セクター間の差は農村より格段に小さくなる。この計測結果の含意は,農村で単に教育水準を向上させても,世帯主が商業や農業に就業しているかぎり,それが世帯所得の上昇につながらないことを意味する。 教育年数が農業と非農業の就業選択に及ぼす影響を分析してみると,中部ジャワ農村において世帯主は教育年数の増加につれて級数的に非農業セクターを選択することが明らかになった。したがって,教育年数の長い世帯主数が増加するにつれて,農業就業者数が急速に減少し,より収益率の高いセクターで就業することになる。その結果,世帯所得が上昇し,貧困世帯数が減少すると予想される。現実には,農業セクターでの教育の収益率は非常に低く,そのセクターの世帯が貧困からの抜け出すことは容易ではない。こうした世帯に対する貧困削減のためには,世帯主が農業に従事しながら非農業セクターへも就業できるような兼業機会を創出することが重要となる。
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