研究概要 |
本年度は、集落営農の組織化が近年進んだ関東地域に位置した埼玉県のR営農組合の分析を実施した。そこでは、6組織を解散・統合し、構成員37名であるが、その大半が60歳以上と高齢化が進み、構成員の再生産に問題を抱えている。また、認定農業者との調整や土地利用調整組織を持たないまま、組織を合併したことから、圃場は町内に分散し、収量も高くない。合併の効果を発揮するためには、町レベルの土地利用調整の実現が不可欠である。そして、集落営農合併の事例から、組織構造は次の二つの方向があり、一つは、集落営農の合併の大きな効果である農地の集積をベースに、大規模な生産・販売の単位を急速に形成し、競争優位を図っていく方向である。そこでは、大半の構成員は事実上農地貸付者となり、少数の主たる従事者による体制を構築し、稲作を中心とした大規模耕種経営の形成を通じて競争優位が目指されている。一方、合併してもなお、多様な農家で構成される地域では、地域資源管理が円滑に実施できない等の不経済が発生する。あるいは,地形的条件により作業効率の向上が難しく、農地市場が狭隘のため現状以上の農地を地域から集積できない懸念がある場合は、これら農地ベースの戦略を採用したのでは競争優位の確保や持続が期待できないという不経済が発生することを明らかにした。これら不経済性の発生が懸念される場合は、合併を通じて、集落を越えて多様な専門能力を有する人材等の人的資源や様々なノウハウ等のナレッジの活用が可能になること、様々な事業に取り組むための農地や資金等の物的資源の調達が容易になること等の有利性を用いて、地域資源を最大限に活用できる多角化戦略を進め、他に模倣することが困難な価値を生み出し、競争優位を確保していく戦略が求められることを明らかにした。
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