研究概要 |
本研究の課題は,経済実験のアプローチを用いて,環境保全型農業経営をはじめとする経済主体のリスク態度を明らかにするとともに,それを通じて,環境保全型農業経営の行動や消費者行動を分析し,リスク態度に整合した農業環境政策のあり方を検討することにある。 本年度は,経済実験をはじめとする実験経済学の手法について,本研究での適用可能範囲を確定するとともに,経済実験の計画を作成した。また,経済実験の補完を目的としたアンケート調査を実施し,調査結果の収集ならびにデータベース化を行った。さらに,滋賀県の環境農業直接支払制度を一例としてとりあげ,農業環境政策実施下における環境保全型農業経営の作付行動と農家のリスク態度との関係を検討した。 その結果,(i)環境農業直接支払制度に参加する農家は,収量リスクと収益率・販売価格を考慮して,慣行栽培と環境保全型農産物栽培へと作付をシェアしていること,(ii)直接支払の助成金単価の上昇は,環境保全型農産物栽培の作付比率を高めていること,(iii)農家のリスク態度は環境農業直接支払制度の政策効果に影響を及ぼすことなどを明らかにした。これらの結果は,学術雑誌に公表した。また,今後,作成された経済実験の計画を実施するとともに,収集済みのアンケートをもとに,リスク態度と環境保全型農業の採択との関係や,消費者のリスク態度が農業環境政策の受容に及ぼす影響等について検討を行う。なお,得られた成果は関連学会において口頭報告を行うとともに,学術雑誌等において公表する予定である。
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