今年度は、新型汎用化水田を想定した野外栽培試験および室内実験によって、土壌水中の物質濃度変動と脱窒反応の化学量式から従属栄養型脱窒菌と独立栄養型脱窒菌による脱窒量を算出した。また単位土壌水量当りの脱窒量に着目し、飽和土層と不飽和土層の境界土層を弱還元土層と定義することで、弱還元土層における従属栄養型脱窒菌による脱窒量を算出し、化学量式による脱窒算出量との比較を行うとともに単位土層厚および単位土壌水量に焦点を当てた脱窒定量に関する一般式を導いた。 その結果、窒素投入量748kg・N/haに対し、従属栄養型脱窒菌による脱窒量が30.0kg・N/ha、独立栄養型脱窒菌による脱窒量が657kg・N/haとなり、投入した窒素の87%が独立栄養型脱窒菌により除去されたことが明らかとなった。また、冬季においても生物学的脱窒作用により200kg・N/ha除去されており、通年での窒素除去が可能であることが示唆された。さらに、地下水飽和土層帯と地下水不飽和土層帯の境界土層を弱還元土層と定義し、弱還元土層での全窒素減少量の積算実測値と化学量式による脱窒算出量との比較を行った結果、従属栄養型脱窒菌の活性土層の厚さは1.49cmと試算された 以上より、新型汎用化水田構造を有した転換畑地では、肥料成分の浸透流失による地下水汚染を防止できることが明確になった。 転換畑地心土層での生物学的脱窒機能と脱窒量との関連を明らかにし、その知見は農地からの窒素排出負荷量の低減に対する強化策の適用ならびに肥料分の流出防止の問題に関連して、学術上、応用上寄与するところが少なくないことが示唆された。
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