本研究は、(1)河川を基軸として、河川周辺の地形、植生、土地利用情報などを統合した河川環境GISデータベースを作成の上、(2)水循環と土地利用を再現する流域モデルの開発を試み、(3)潜在的な河川防災機能を検討し、防災・景観保全を目的とする土地利用計画のあり方を提案することを目的とする。 20年度は、前年度に研究対象として選定した天竜川上流とその支流三峰川流域を対象として、(1)の河川環境GISデータベースの充実と共に、対象域の地形ならびに土地利用解析の調査、検討を次のとおり実施した。 1)天竜川上流域の地形データ(地形標高DEMおよび河川測量データ)のGIS解析によって、河道狭窄域を中心とした河川周辺の地形特性と河道との関係を考察した。 2)天竜川上流域および支流・三峰川周辺域の空中写真、衛星画像データによる地表被覆特性の経時的な変化特性を検討し、土地利用や災害面から見た経時的・空間的な特徴抽出を試みた。 3)天竜川上流域で実施されている農地・水・環境向上活動対策事業の実態を調査し、河川周辺域での土地利用計画や河川保全事業計画との関連性、あるいは流域内部の霞堤や引堤などの天竜川特有な伝統的な利水・洪水防御技術との連携可能性と課題を探った。 4)詳細な衛星画像(ALOS)と10m解像度のDEMとの統合の方法を検討した。今後、この方法によって、流域モデルを改良し、潜在的な河川防災機能を明らかにすることによって、最終年度にむけての課題を達成する予定である。
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