研究概要 |
本研究は、河川を基軸として、河川周辺の地形、植生、土地利用などを統合した河川環境GISデータベースと、水循環から見た流域モデルの統合によって、河川周辺域の潜在的防災機能を考慮した防災・景観保全のための土地利用計画のあり方を検討することを目的とする。 21年度は、従来から収集整備を進めてきた天竜川上流域(伊那峡から三峰川合流部)を対象として、本流・支流を統合した流出解析と洪水流を推定する流域モデルを開発すると共に、河川周辺域での明治から現代に至る土地利用を検討することにより、土地利用の潜在的な防災・景観機能を次のとおり検討した。 1)天竜川上流域の精査対象域(伊那峡と三峰川合流部まで)の地形データ(10m標高DEM)、河川測量データ)、および4時代(明治、昭和、平成10年、平成20年)の河川周辺域の土地利用情報を整備した。 2)精査対称域における支流からの流出解析(合理式)と天竜川本川の洪水解析(一次元不等流)モデルを作成し、近年最大の平成18年洪水と100年確率計画洪水を前提とした洪水シミュレーションを実施し、水位上昇や背水による洪水状況の推定、検証を行った。 3)上述の流域モデルによって推定された洪水イベントと河川周辺域の地形や過去4時代の土地利用の変遷から、洪水発生の特徴と伝統的な土地利用の対応策を検討・考察した。 4)さらに、海外での事例として,ビエンチャン平野氾濫原に存在する天水田地帯、河畔林、産米林などの調査結果から、洪水と土地利用の独特な関係性とその在り方の実態をまとめた。 以上の結果に基づき、河川周辺域での伝統的・潜在的な土地利用と防災・景観保全機能の連携可能性を探り、河川周辺域を対象とする土地利用計画の方法をまとめる段階に至っている。
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