研究概要 |
水文観測データ不足の農用流域では従来扱うことが困難な降水量や蒸発散量の時空間分布について,粗めの解像度のレーダー観測データ・衛星観測データを,数値地図モデル(DEM)のセル解像度単位の細かさに見合う分布までダウンスケール推定し,水文パラメータ(粗度係数,透水係数,斜面勾配,標高データ,河道勾配,斜面長,斜面方向,河道長など)の空間分布を同セル解像度単位で高精度に再現すること,ならびに,それらから分布型流出解析を遂行し,水文観測データが乏しい流域で高精度に流出シミュレーションを行うことを目的としている.その際,不確実性を評価したり取り除きながら時空間推定したりダウンスケール推定する事が可能な点において優れていると判断した地球統計学手法を採用することとした.初年度では計算出力であるGCMデータを主対象としたが,当該年度では実際の観測データを対象として,降水量分布ならびに地下水位分布についてまず着目し,時空間分布推定を試みた.その結果,実測の不確実性とモデル化誤差の影響から,当初手法を更に改良する必要が生じ,時間と空間の相関性の融合や時空間変動パラメータの工夫の面で新たな手法を提案して良好な結果を得た.それを受けて,初年度開発した推定システムを実測に応じたシステムに移行した.最終的には,分布計算出力のビジュアル化に必要な分布可視化システムもソフトウエアの面で機能充実させるべき課題は残っているが,総じて開発に成功しており,ポストプロセッシングとして有効に機能している.
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