研究概要 |
平成19年度は,日本の全国各地における豪雨および渇水のそれぞれの状況について,1901年〜2006年の106年間に全国52地点で観測された日雨量・月平均気温・月日照時間データを基に,その長期的経年変化を調べた。 まず,全国における降水特性の経年変化を,日降水量データを基に,確率日降水量,降水の時間的集中度,降水日の平均降水量,日降水量の変動係数の長期的変化を調べることにより統計的に吟味した。その結果,検討対象としたいずれの指標も全国的に増加する傾向にあり,近年になるに従って大雨の規模が大きくなり,降水が短期間に集中しその変動幅が大きくなる傾向が示された。この傾向は,特に,関東・東海・近畿地方の太平洋側の都市部で顕著であった。 次に,近年の少雨・渇水の状況について,年降水量,30日間連続雨量,連続無降雨日数,蒸発散量,水資源賦存量の平均,10年確率値,変動係数の経年変化を調べることにより調べた。この検討の結果,年降水量,30日連続雨量については,30年移動平均値に経年的減少傾向が見られることが示された。また,10年確率値については経年的に減少,変動係数には経年的に増加の傾向が見られることから,年雨量の変動幅が経年的大きくなり,渇水が年々厳しくなる傾向が示された。蒸発散量については,経年的に増加しており,降水量から蒸発散を減じることによって得られる水資源賦存量は経年的に減少していることが示された。なお,これらの観測水文量に関する検討に加え,菅原によって開発された標準的4段型タンクモデルに日降水量と日蒸発散量を与えて得られる計算日流出量の経年変化についても調べた。各年における計算流量の流況曲線やタンク総貯水量の最小値についてその経年変化を調べた結果,渇水時の貯留量が経年的に減少していること,渇水量の減少率が著しいことなどが示された。
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