研究概要 |
(1)気象・水象条件が類似する地域では同一規模の豪雨はどこでも発生しうると仮定して「地域最大雨量」の概念を導入し,その地域最大雨量(または地域確率雨量)についてその経年変化を議論した。地域分類には洪水比流量曲線で採用されている分類を準用した。その結果,確率日雨量は本州太平洋側などを中心に11地域中8地域で増加傾向がみられた。1時間雨量は,3地域,10分雨量は2地域で増加傾向がみられ,四国南部では両雨量ともに増加していることがわかった。また,雨量観測点ごとに確率雨量の経年変化を検討した結果,10年確率目雨量は,20世紀初頭(1900〜1920年代)の10年確率雨量に対して,近年では約60%の地点で1.1倍以上増加していることがわかった。また,最近の58年間の資料に基づき10年確率1時間雨量,47年間の10年確率10分雨量の経年変化を調べると,20世紀中ごろ(1950〜1960年代)の確率雨量に対し,30%強の地点で1.1倍以上の増加傾向を示していることがわかった。 (2)気象状況の変化が河川の流況に及ぼす影響については,水利用や洪水制御などの影響があるため観測流量だけで評価することは難しい。ここでは,我が国における河川流域の標準的な流出特性を表すと考えられるタンクモデルを用い,このモデルに日本全国で観測された水文気象データを与えて得られた計算流量を基に,近年の流出特性の経年変化を数値実験的に調べ,水文気象条件の変化が河川の流況に及ぼす影響を検討した。全国156箇所の気象観測点における水文気象データを用いて流出計算を行い,各年の流況曲線の経年変化を調べた結果,流量が少なくなるほど流量の経年的減少の傾向が大きく,約70%の観測点で渇水量が20%以上減少することが示され,特に,瀬戸内地域,長野県周辺,北海道,南西諸島で50%以上の大幅な減少が見られた。
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