高度処理水の水田灌漑水としての影響と効果的利用方法を解明するため、愛媛県O地区の高度処理水と河川水に^<15>NO_3(全灌漑期間)およびP^<18>O_4(中干し後のみ)を微量溶解させた水を利用し、O地区の水田土壌(灰色低地土)を用いたポット試験を行った。その結果、施肥条件によらず、処理水利用では河川水利用に比較して、刈り取り時の水稲の分げつ数は多く、籾及び茎・葉の乾燥重量は大きく、登熟歩合は高かった。また、第5節間は短くて太く、倒伏しにくい形態であった。生育期間全般のSPAD値と最大草丈および籾千粒重には、処理水利用と河川水利用で明確な差はなかった。一方、利用した水によらず無施肥条件、基肥のみ条件、基肥+追肥条件の順に分げつ数は多く、籾及び茎・葉の乾燥重量は大きく、登熟歩合は高かった。また、^<15>NO_3移行量から求めた、水稲に移行した処理水中のNO_3は施肥が多いほど多く、基肥+追膜巴条件で35%に達した。しかし、籾及び茎・葉中のN含有量が高まりN過多となる傾向はなかった。P^<18>O_4移行量から求めた基肥+追肥条件での水稲生育に移行した処理水中のPO_4は約5%であった。施肥条件によらず、籾及び茎・葉の塩基類含有量は、処理水利用で河川水利用よりも高まり、基肥+追肥条件ではNaとCaの上昇が顕著であった。以上より、日本の代表的水田土壌である灰色低地土では、高度処理水による水稲生育への悪影響はなく、収穫量増大・耐倒伏性向上といった好影響が生じること。また、収量を増加させ、処理水中のNO_3の肥効率を高める施肥条件は基肥+追肥条件で、その際、処理水中のPO_4も5%以上が肥料として働き、塩基類ではNaとCaの肥料効果が大きいことが分かった。以上の知見は、今後、益々水量が増加する高度処理水の水田への利用の有効性・留意点を明らかにしたもので、持続可能な社会構築に貢献する。
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