研究概要 |
本年度は,主として佐賀県の地盤沈下観測井データや有明干拓堤防の水準測量データなどをもとに,白石地区の地盤沈下メカニズムや地盤沈下が干拓堤防へ及ぼした影響(被害)について検討した。その結果,設置深度が異なる白石地盤沈下観測井における累積地盤沈下量と地下水位のデータから,最低地下水位を記録した平成6年度の大渇水時においては,有明粘土層下位の洪積砂礫層に塑性的な沈下が生じたことを確認した。同一地点の設置深度の異なる2つの地盤沈下観測井データから求まった有明粘土層下位の洪積砂礫層の体積圧縮係数mは,天神地盤沈下観測井地点の深度58〜197mにおいて(1.03〜1.60)×10^<-6>m^2/kN,白石地盤沈下観測井地点の深度84〜260mにおいて(0.85〜2.33)×10^<-6>m^2/kN,新有明地盤沈下観測井地点の深度31〜126mにおいて(0.82〜1.71)×10^<-6>m^2/kNの範囲であった。地盤沈下が干拓堤防へ及ぼした影響としては,平成6年度の渇水時における有明干拓堤防全線での沈下(1〜7cm)や新有明排水樋門底版部(地盤沈下により生じた空洞部)からの漏水被害を確認した。 また,地盤沈下が干拓堤防へ及ぼす影響を評価するために必要な有明干拓堤防と新有明排水樋門取付堤防についての2つの有限要素解析モデルを作成し,影響評価項目や解析条件などについて検討した。解析に使用する地盤の材料定数に関しては,主に地盤沈下が生じる有明粘土層についての検討を追加した。さらに,地盤沈下の将来予測については,有限要素法やニューラルネットを利用する方法などについての検討を実施した。
|