研究概要 |
本年度は,地盤沈下観測井データ(佐賀県),水準測量データ(国土地理院,佐賀県など),地下水採取量データ(佐賀県)などをもとに,白石地区の地盤沈下メカニズムや今後の地盤沈下の進行について検討した。その結果,平成13年度に上水道の水源を地下水から河川水へ転換した直後は,地下水位が急激に回復し,地盤沈下の進行は認められなかったが,地下水位の年平均値がほぼ一定となった平成16年度以降は僅かではあるが経年的に地盤沈下が進行していることが分かった。この観測結果と圧密理論から考えると,白石地区の地盤沈下は,現在の地下水位が維持された場合,有明粘土層の圧密により今後も僅かずつではあるが当分継続すると判断された。また,同一地点の設置深度が異なる2つの地盤沈下観測井データから求まる有明粘土層下位の洪積砂礫層の体積圧縮係数m_vは,八戸地盤沈下観測井地点の深度31~62mにおいては(4.21~5.63)×10^<-6>m^2/kNの範囲となった。この値は,深度が大きく土被り圧が大である白石・天神・有明地盤沈下観測井地点の洪積砂礫層の値よりかなり大きかった。 また,地盤沈下が干拓堤防へ及ぼす影響について,有明干拓堤防についての2次元有限要素解析モデルを使用して検討した。その結果,地下水位の低下量が大きくなりかつ低下が生じた期間が長くなると,堤防本体部と周辺地盤の沈下量の差が大きくなり,盛土材の種類や盛土被覆部の剛性にもよるが,沈下に加えて亀裂が発生するなどの影響が出ることが示唆された。さらに,地盤沈下のメカニズム検討や将来予測を行う方法として,地盤沈下観測井による地下水位観測と有限要素法による1次元圧密解析を組み合わせる方法についても検討した。最終年度に当たり,研究全体の取りまとめを行った。
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