研究概要 |
能美市寺井町粟生の農業水路では,ドジョウかごによるトミヨの動態調査を継続した.調査の結果,昨年同様,3〜8月のトミヨの産卵時期に上流区間に遡上する個体が多いことが明らかになった.体長の測定結果などからトミヨは湧水比率と植被率が高い上流区間で産卵繁殖している可能性が高いと推測された.また,上流湧水区間では水温が18℃以下であること,流速が小さいことなどから,産卵場所の条件を備えていることも確認された。個体密度調査の結果から,11月には下流水路区間においても流速の小さい領域が多くなり、トミヨの個体密度が大きくなっていることが分かった. 農業水路が直接海域に流入する手取川七ヶ用水の山島用水4-2号支線の下流区間約3.5kmを対象として、魚の動態と分布状況を調査した.動態調査は、水路最下流の落差工d1の直上流に設置した定置網でアユ、ウグイ、アユカケ、カジカの4種を採集した。4種のうち,アユ、アユカケ、カジカは海域から遡上したものと考えられた。また、投網とサデ網による分布調査の結果,8月〜10月の期間にはアユが調査区間全域に連続的に分布していることが明らかになった。調査区間に設置された多段式落差工はアユやウグイのような遊泳魚の移動に役立っていると考えられた。また,動態調査と分布調査で採集された淡水魚類は4目8科17種で、カジカとアユカケは、それぞれ最下流部の約500mと約300mの範囲に分布が限定されていた. トミヨのための魚道の水理模型実験を14L/sと25L/sの2流量で全面越流潜孔なし型、全面越流潜孔あり型、アイスハーバー型、千鳥X型について実施した.その結果、全面越流潜孔あり型が比較的幅広い流量条件で高い遡上率を記録した。それに対して、魚道上下流水位を現況程度の0.26cmに設定した実験では全面越流潜孔あり型においても遡上率は8%と大きく低下することがわかった。今後、魚道上下流の水位差が30cm程度になってもトミヨが遡上可能である魚道の開発を行う予定である。
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