研究概要 |
魚類の動態調査を石川県能美市の熊田川流域の湧水水路ではドジョウかごを用いて,石川県羽咋郡志賀町鷺池の試験魚道においては小型定置網を用いて実施した.石川県白山市の山島用水4-2号支線では,投網による採集調査を4月と5月に実施した.4月下旬には山島用水の最下流地点でアユが確認され,5月には上流へ分布を拡げていた.熊田川上流の湧水水路では,昨年同様トミヨは4月に遡上数が最大になった.4月のトミヨの遡上数は2008年は約330尾であったが,2009年は約200尾となった.湧水水路を遡上する主要な魚種はトミヨ,アブラハヤ,ドジョウであった.2008年と2009年を比較すると,トミヨはやや減少,アブラハヤは減少,ドジョウ,ドンコ,スナヤツメ,シマドジョウが増加した.鷺池に設置した2つの試験魚道では,2009年9月~2010年3月の間に,右魚道で1日平均6尾,左魚道で2尾のトミヨが遡上した.トミヨのために開発した潜孔付き全面越流式魚道は,現地実証試験によってある程度機能していることが確かめられた.主要な遡上魚は,トミヨ,ギンブナ,タモロコであった. 水理模型実験では,従来の6連式プール魚道のプールを半分の大きさにした12連式プール魚道を製作し,トミヨの遡上実験を実施した.その結果,12連式は6連式に比べて,遡上に要する時間が大きくなり,遡上率がやや低下する半面,魚道の設計水位差を従来の18cmから33cmに大きくできる利点があることが分かった.また,2日間にわたる長時間遡上実験では,トミヨは夜間に全く遡上しないこと,これまで遡上率が低かった潜孔なしの全面越流式魚道でも2日目以降にある程度遡上率が向上することが明らかとなった. 鷺池の試験魚道では,非灌概期の下流水位の低下によって,特に下流隔壁の潜孔流速が毎秒1mを超える大きさとなっていた.そのような水理条件でもトミヨの遡上が確認されたことから,トミヨが隔壁上部を跳躍遡上しているのか,あるいは一般の突進速度よりも大きい遊泳力で潜孔部を遡上しているのかを明らかにすることが必要であると考えられた.
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