研究課題/領域番号 |
19580286
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大澤 啓志 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20369135)
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研究分担者 |
楠本 良延 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 主任研究員 (30391212)
嶺田 拓哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所, 主任研究員 (70360386)
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キーワード | 農村計画 / 生物多様性 / 植生管理 / 両生類 |
研究概要 |
耕地植生における生物多様性管理は、雑草・害虫防除の論理、保全生態学の論理、IBM(総合的生物多様性管理)の論理がこれまで提示されるが、耕地においては、生産も生物多様性も考慮に入れながら、生物相を管理する必要がある。その際、水田の植生には2つの捉え方、すなわち水田に成立する植生(水田内の植物種にも"obligate weeds"と"facultative weeds"の2タイプがある)と耕作放棄田に成立する植生があることを確認した。水田の管理と植生の対応について既往研究を整理し、(1)農業生産(雑草学)の分野では管理と植生の対応については研究蓄積がある、(2)害草度が低い種、低出現頻度の種(希少種)についての知見は少ない、(3)農業生産と生物多様性との関連に言及した事例はほとんどないことを明らかにした。 耕地周辺の半自然草地植生における生物多様性管理は、まず水田周辺には個別の田面や水路のみではなく、ため池-水田、水田-畦畔、水田-水路、水田-森林など、異なる空間の「境界領域」に線状の半自然草地が多数、存在することを示した。自然環境や歴史によって形成された多様な水田景観が存在し、それぞれに成立する二次草地(半自然草地)は非常に多様となることを明らかにした。さらに、わが国の農耕地周辺の半自然草地の既往研究を整理し、(1)質の高い半自然草地が形成される場所(棚田畦畔・法面、谷津田の袖部刈取り草地等)での研究事例が多いこと、(2)管理、基盤整備のあり方と成立する植生の関連を検証した研究もあるが、まだまだ蓄積は少ないことを明らかにした。そして、質の高い半自然草地が維持されている場合と、既に多様性の低い畦畔草地の場合に分けて、管理の方向性が異なることを提示した。 加えて、農村の様々な景観構成要素と動物相、特に両生類相成立の対応関係を整理し、各景観要素の連結性の視点から生物多様性ポテンシャルの考え方を提示した。
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