研究概要 |
本年度は,ボーリング調査で採取した不攪乱深層土壌コアを用いた分析を進めるとともに,前年度に実施したボーリング調査後に構築した鹿児島県鹿屋市の地下水観測井戸において地下水の水文水質調査を行った.また,茨城県恋瀬川流域にある県が管理する3ヶ所の地下水観測用深井戸を調査対象として水質ゾンデを用いて深層地下水調査を行った.これらの調査・分析の結果から次のことが明らかとなった。 まず,ボーリング調査で得られたコアの分析から,硝酸性窒素の移動速度と関係が深い陰イオン交換容量(AEC)は,土壌及び表層地質(0〜5m)において高く(1.2〜26mmol/kg),シラス層以深では0.5以下と低いことがわかった.このことから硝酸性窒素の溶脱過程において生じる遅延は主に表層から5mまでで生じ,それ以深ではほぼ水移動に従って硝酸性窒素が移動することが明らかになった. また,鹿児島の観測井における地下水調査から,帯水層の水質は電気伝導度(EC)や酸化還元電位等の分布からみると地質層序にほぼ対応した分布であることがわかった.2008年7月下旬において第一帯水層の上部にあたるシラス層(GL-32〜64m)のECは3.4〜6.0mS/mであったのに対して,第一帯水層下部の大隅降下軽石層(GL-64〜71m)では3.0〜3,8mS/mとやや低く,第二帯水層(71m以深)では2.7mS/mとさらに低い値であった,しかし,採水前後の水質値は安定せず,長期的な観測を行う必要があると考えられた. 一方,恋瀬川流域の3ヶ所の深井戸(八郷1号,八郷2号,石岡)における水質検層調査から,八郷1号(深度GL-116m)では,深度による水質の差異が認められたが,八郷2号(GL-42m)と石岡(GL-45m)では井戸内の水質に違いが見られず,観測井内の対流の発生や周辺地盤との水の出入りの制限など,水質観測上の問題点が浮き彫りになった.
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