研究概要 |
最終年度は,昨年度に引き続き,ボーリング調査で採取した不攪乱深層土壌コアを用いた分析を行うと共に,その取りまとめを行った.また,鹿児島県鹿屋市の地下水観測井戸において地下水の水文水質調査を行った.不攪乱深層土壌コアを用いた試験では,粒径分布,仮比重,比重,土壌水分特性曲線,飽和・不飽和透水係数,pF,溶質の分散係数について水理地質を構成する代表層位を対象として測定し,これまでに測定された化学性や生物特性と合わせて取りまとめを行った.その結果として主要帯水層の飽和透水係数を見ると,入戸火砕流堆積物層(シラス層)で10^-3~10^-4cm/s,大隅降下軽石層で10^-2cm/s前後であったが,下部の礫層の一部についてはコアサンプルの採取ができず測定できなかった.さらに,不透水基盤をなす四万十類層群のコアサンプルの測定も通常の試験器では困難であった.また,化学性について全炭素含量の鉛直分布をみると,表層付近(0~2.4m)で1.6~6.8%と比較的高いのに対してシラス層~大隅降下軽石層中では0.01~0.17%と低く,さらに基盤岩では0.03%であった.また,旧表土であったと考えられる有機質砂質シルト層では,GL-72mの位置にあるにもかかわらず3.6%と高かった.全窒素についても同様の傾向であったが,アンモニア性窒素含量では,旧表土やその下位のシルトや砂層(1.4~1.9mg/100gDW)において,表層から大隅降下軽石層における含量(0.0~0.3mg/100gDW)より多かった. また,地下水観測井における水質観測を数度にわたって試みたが安定した観測ができなかった.これは,地下水の採水法に問題があったことと,層内における地下水の鉛直混合等による撹乱の影響が強いこと等が理由と考えられた.今後,地下水観測法の改良や未評価の層位の特性把握等が課題として残された.
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