研究概要 |
中国江蘇省江都市郊外のコムギ・イネ2毛作地帯に設置されたオゾン濃度([0_3])をFACE装置によって人工的に上昇させたFACE圃場(E-03)と対照圃場(A-03)で,微気象環境の自動測定を行うとともに,個葉の蒸散・光合成速度,気孔コンダクタンス,植物体面積密度,群落内部の日射透過率,植物体表面温度などの鉛直分布を手動測定し,水田ではライシメータによる実蒸発散量の測定を行った.現地での手動測定は,2008年4月15-24日,7月8-17日,9月2-11日に実施し,それ以外に機器のメンテナンスを2009年3月17-20日に実施した。 出穂開花期に,両圃場で緑葉,黄緑葉,枯死葉別に葉面積を測定した結果,E-03の植物体の方が緑葉が少なく,黄緑葉と枯死葉が多いことが明らかになった.これは,高オゾン環境が植物体の老化を促進させた結果であると考えられた. E-03とA-03で,コムギ(YM16)とイネ4品種(WYJ21,LYPJ,SY63,YD6)の気孔コンダクタンス(gs)を測定し,気象条件(光合成有効放射;PAR,飽差;VPD,気温),土壌水分,オゾンドウス(AOT40),出葉後日数(phenology),1日の時問(time)とgsの相関を分析し,試行錯誤によってJarvis型の関数でgsをモデル化した.昨年度はコメ1品種についてgsモデルを完成させたが,今年度はコムギに加えてコメ4品種のgsモデルを構築した結果,VPD,AOT40,phenology,timeの関数に,コムギとイネの違いとイネ4品種問の違いが表された.また,AOT40が約2000ppbhを越えるとgsを減少させる効果が現れ始めた.これにより,オゾン濃度の上昇がgsの低下を通して個葉の蒸散量を低下させ群落の温度を上昇させる効果が再現された このように,作物種や品種によって差異はあるものの,微量ガスである[0_3]の上昇という大気環境の汚染が植物体の老化を促進し,気孔の閉鎖によって温度を上昇させると予測された点が,本成果の重要な点である.
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