穴播き式の不耕起播種機を開発している。これまでの構造では、作業速度が0.6m/s以上になると播種穴に種子の入らない割合が20%近くに達するため、精度向上に関する改良を行ってきた。播種穴は垂直方向に回転する円盤から放射状に飛出した筒状の突起(種子導管)と、その先端に取付けた凸子が一体となって地表面に刺さり形成される。凸子は土壌から浮いた時に種子導管から離れ、内部に留めていた種子が回転方向前方(進行方向後方)から種子落下口を通って播種穴内に放出される。 高速作業(円盤の高速回転)時には凸子が種子導管から離れるまでに上方に回転移動し、種子放出位置と播種穴位置がズレて精度が低下することが認められた。そこで、(1)凸子と種子導管が自然に離れる従来の構造から、土壌から浮いた後、一定位置で強制的に凸子を押下げて種子落下口が開く構造にした。凸子は振り子状態で種子導管に取付けていたが、強制的に種子落下口を開けるためには凸子の後方への逃げを防ぐ必要があり、凸子と種子導管を回転方向後方でヒンジ留めした。(2)(1)の改良で播種精度は向上したが、ヒンジ留めした構造では表面に凹凸がある圃場の場合、凸子が土壌から浮き上らないうちに強制的に押下げる状態となってヒンジを破壊することがしばしば生じた。(3)凸子と種子導管を一体化して播種穴形成専用とし、種子落下口を凸子の進行方向後方上部に新たに設けた。新たな種子落下口は土壌と接しないため、強制的に押下げても動きが妨げられて破損するという事態は生じない。また、種子落下口を分離したことで、同部への土壌の進入を防ぐことができ、凸子に付着した土壌の除去も容易になった。
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