研究概要 |
CO2削減の取り組みとして自然エネルギーの利活用が注目を集めている.このうち自然エネルギーを利用した小規模発電は地域分散型エネルギーシステムの一環として,行政,企業,住民の関心も高まってきていると言える.本研究で取り組んでいるマイクロ水力発電システムは,太陽光発電や風力発電に比べて24時間安定的に出力を得ることができる利点がある.用途としては採算性を見込んで自家発電レベルを考えており,農作業管理用電源,街灯用電源,家庭用電源,電気自動車への充電用電源,通信用電源等幅広い活用が可能である. 本研究ではまず,学内外から研究に協力する者を集い,研究会を開催し,水車の選定と活用法について検討を深めた.その中で,低流量・低落差の条件下で効率よく稼働すると言われている富山県の産業遺産であるらせん水車に着目し,発電システムに生かせないかと考えた.しかし,らせん水車は経験的に作られたものであるために,その動力特性について研究事例は殆ど無く,技術的な改良も進んでいないのが現状である.そこで実験や理論的考察を通じてらせん水車の動力特性を解明し,発電効率の向上を目標に水車の構造や水理条件の改良を進めてきた.特に,農業用水や工業排水といった低流量,低落差の小規模な条件下では,水流のわずかな乱れや変化がトルクや回転数に与える影響が大きく,マイクロ水力発電の実用化に向けては効率の良い水車の構造的改良が課題となっている.これまでの研究結果から,らせん水車は水の位置エネルギーを効率よく水車羽根で捉えトルクに変換されることがわかった.この特徴を生かし,水車の構造や流水の制御を改良した結果,実証試験において3kwの発電出力を得ることができた(流量0.3m^3/s,落差1.5mの条件).これは発電効率が70%程度になることから,実用的に十分活用できるレベルに達したと言える.
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