ポーラスカップを用いて、土壌の乾燥程度と蒸発量を測定する測器を開発した。開発した測器はポーラスカップと透明の塩ビ管(長さ1m、φ13)を接着しただけの構造で、塩ビ管内に水を満たした後にシリコン栓をして測定する。この測器を土中に挿せば土壌の乾燥程度、空中に吊せば蒸発量が測定できることを明らかにした。ロットによってポーラスカップの透水性は異なったが、土壌水分計および蒸発計としての計測には影響しなかった。土壌水分計としての特徴は以下の通りである。土壌がポーラスカップの空気侵入値(pF2.7)以上に乾燥すると、ポーラスカップを通して測器内部に空気が入り、塩ビ管上部に空気の層ができた。1日当たりの空気層の増加は、土壌が乾燥するほど大きくなった。また、この測器では土壌の乾燥程度に応じた空気層厚が日々積算された。この点は、土壌のpF値や体積含水率の瞬時値しか測定できない従来の土壌水分計と大きく異なる特徴である。また、土壌中に水が供給されると、空気層厚は0付近に戻った。これは、測器内部の空気は真空に近く、測器内の負圧により土中の水を測器内部に取り込むためであった。蒸発計としての特徴は以下の通りである。蒸発量はポーラスカップを通して蒸発した水量をポーラスカップの表面積で割ることにより求めた。小型蒸発パンの蒸発量と比較した結果、気温が低くなるほどこの測器で測定した蒸発量が多くなった。ポーラスカップ蒸発計と小型蒸発パンの蒸発量の比は夏季で1.0程度であったが、冬季は1.9程度となった。蒸発量の比が気温に体存することを利用し、ポーラスカップからの蒸発量を日平均気温で補正することにより、小型蒸発パンの蒸発量を±10%の誤差で推定できた。ポーラスカップ蒸発計は日々の蒸発量の積算値が測定される。そのため、1日当たりの蒸発量は前日の指示値(水位)との差から求めることができた。
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