開発した測器はポーラスカップと透明の塩ビ管を接着しただけの構造で、塩ビ管内に水を満たした後にシリコン栓をして測定する。この測器を土中に挿せば土壌の乾燥程度、空中に吊せば蒸発量が測定できる。土壌水分計の特徴として以下の点を明らかにした。土壌の種類に関しては黒ボク土でも灰色低地土でも測定でき、土壌の圧力水頭に応じた指示値が日々積算された。しかし、砂に関しては2ヶ月程度測定を行っても指示値は0付近から動かなかった。また、塩ビ管内の圧力水頭も0のままだった。この測器はポーラスカップ内と土壌中の水の連続性が保たれないと測定できないことが示された。土壌水分計にメーカーが試作した低pF用(pF2.0、2.3、2.5)のポーラスカップを使用した結果、それぞれのpF値に応じた土壌水分から測器が作動した。これにより、本測器が野菜などの灌水指標として利用できる可能性が示された。蒸発計として以下の点を明らかにした。一般のポーラスカップで蒸発量を測定すると、測器内部は0.2気圧以下となり、雨などで濡れると指示値が戻り、蒸発量が算出できなくなる。メーカー試作の低pF用ポーラスカップを測器に使用した結果、測器内部は1気圧程度に保たれ、水に浸けても指示値の戻りはほとんど無かった。これにより、雨に濡れても蒸発量のみが測定される蒸発計が作成できることを示した。一般のポーラスカップを使用し、水濡れに伴い指示値が戻る特性を検討した。一般のポーラスカップは透水性に個体差があるが、土壌の乾燥程度や蒸発量の測定には透水性の個体差は影響しなかった。しかし、水に浸けたときに指示値が戻る速度(吸水速度)は透水性に比例した。このことは、濡れに対して反応が異なる測器が作成できることを示している。蒸発による測器内の水位低下と、降雨の吸水による水位上昇から、本測器による水収支評価の可能性が示された。
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