開発した測器はポーラスカップと透明の塩ビ管を接着した構造で、塩ビ管内に水を満たした後にシリコン栓をして測定する。塩ビ管内の水位が指示値となり、本測器を土壌に挿せば土壌の乾燥程度、空中に吊せば蒸発量、雨に当てれば水収支が測定できた。ポーラスカップが空気侵入値以上の吸引圧を受けると、ポーラスカップを通して測器内部に空気が入った。吸引圧が大きくても単位時間にポーラスカップを通過できる空気の量は決まっており、1気圧換算の空気量で0.566cm3/dayであった。空気の侵入量はポーラスカップの製造ロットや透水性には左右されなかった。本測器を土壌に設置した場合、土壌がポーラスカップの空気侵入値以上に乾燥すると、ポーラスカップから塩ビ管内に空気が入った。この空気が土壌の吸引圧に釣り合うまで引き伸ばされ、塩ビ管内の水位が低下した。本測器は水位の低下を指標として土壌の乾燥程度(吸引圧)を測定することができた。水ストレスを受けている植物の近くに測器を設置すると、植物はポーラスカップを通して塩ビ管内の水を吸水し、指示値に影響を及ぼした。本測器の指示値は植物(黒大豆)の水ストレスを敏感に示す指標となり、水位の低下量に比例して黒大豆の収量が低下した。本測器を空中に吊した場合、ポーラスカップから水が蒸発して塩ビ管内の水位が低下した。蒸発した水の体積と比較して、ポーラスカップから侵入する空気の量は上記のように少ないため、塩ビ管内は0.1気圧以下となった。この状態でポーラスカップに雨が当たると塩ビ管内の負圧により雨水が吸い込まれ、最終的には塩ビ管内がほぼ1気圧の状態となる水位まで吸い上げられた。この現象を利用しておおよその水収支が測定できた。ただし、雨水の吸水速度はポーラカップの透水性に左右されたため、水収支の比較観測を行う場合、透水性が同じポーラスカップで測定を行う必要があった。
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