作物の生育過程(フェノロジー)、葉面積指数、葉面傾斜角などの特性をリモートセンシングにより非破壊・非接触で観測することは、安定的な生産や肥培管理・作業管理による環境保全にとり重要な技術である。本研究では、野外に栽培された作物のフェノロジー、葉面積、バイオマス、葉面傾斜角分布などの形態・構造および各種成分含有率を分光光学的・画像工学的にモニタリングする新たな方法を開発し、夜間に人工光源下で撮影することにより高精度な作物生育データを連続的・長期的に自動取得することを目的としている。本年度は、富山県農業技術センター内の作況試験水田にマルチバンド定点連続観測カメラを地上高12m、6mおよび1mの位置にそれぞれ設置し、イネ栽培期間中の画像データを取得した。このうち1m高のカメラはフラッシュによる昼夜連続撮影を試行した。また農業環境技術研究所内水田(於つくば市)において、可視域30バンドの分光画像カメラ(JAXAより借用)によるイネ群落の昼夜観測を生育後期を中心に延べ3回実施した。定点連続撮影によるバンド反射率推定値から、イネのバイオマスおよび葉色推定の可能性が見いだされ、画像の高速フーリエ変換処理により、フェノロジー判別の可能性が示唆された。また夜間撮影画像の解析により、特に出穂などイネ植物体の形態上の変化が比較的容易に抽出可能なことがわかった。一方、可視域30バンドの昼夜の穂と葉などの器官別反射特性の解析により、肥料水準や収量の差に感度を有する波長バンドを探索した。この知見を基礎に簡易な偏光・分光画像撮影装置を企画・設計した。20年度には、マルチバンド定点連続観測カメラをソフトおよびハード面で改良するとともに、現有装置を農業環境技術研究所内水田に設置して19年度までの成果を追試・検証する。また偏光・分光画像の野外計測法を策定し、作物の葉面傾斜角の検出等その活用法を検討する。
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