ヒトロタウィルスは乳幼児に重篤な下痢症を引き起こす病原体であり、途上国では年間およそ60万の死者、先進国でも毎年多数の入院患者をもたらす原因となっていることから、有効な感染防御法の確立がグローバルな検討課題となっている。本研究では、ヒトロタウィルス感染を強力に阻害する作用を示す牛乳ラクトフォリン(LP)の構造とウィルス感染阻害機能の相関を分子レベルで明らかにすることを目的としている。 本年度はHeparinアフィニティークロマトグラフィー及び尿素含有バッファーを用いたゲルろ過によるLP28K/LP18Kの個別分取方法を確立し、LPが示す阻害活性に修飾糖鎖が関与するかどうかについて検討し、以下の結果を得た。 ■ LP18K/LP28Kの分画: Heparinアフィニティーカラムによりカラム吸着画分(heparin-BO)を回収した。LP18KとLP28Kの両方のラクトフォリンを含む画分を得るのにこの方法が有効であることを確認した。 ■ LP18KとLP28Kの分取: 6M尿素含有バッファーを用いたSuperdex75ゲルろ過クロマトグラフィーを用いたラクトフォリンめ精製を行い、二つの溶出画分(F1とF2)を得た。F1にはLP28K、F2にはLP18Kが主として含まれることを二次元電気泳動で確認した。両者の抗ウィルス活性については現在詳細に検討中である。 ■ 阻害活性への糖鎖の関与: N-Glycosidase Fを用いてN型糖鎖の除去を行った。Con Aレクチン反応性よりN型糖鎖除去を確認したheparin-BOについて中和活性を調べた結果、阻害活性を失うことを確認し、ウィルス感染阻害作用の発揮にはN型糖鎖が不可欠であると結論した。
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