研究概要 |
本研究では、抗菌と抗ウイルス作用を合わせ持つ新規な感染抑制作用を発現する“スーパー乳酸菌"の実用化のため、その感染抑制機構を明らかにすることで科学的根拠を得ること」を最大の目的とした。この目的のため、「(1)レクチン産生性乳酸菌が下痢ウイルスやC.jejuni、H.pyloriと同一の腸受容体へ結合することで、感染を阻止する(2)レクチン産生性乳酸菌が何らかの物質を産生し、抗菌、抗ウイルス作用を示している」との仮説を立て、実験を遂行してきた。昨年度、C.jejuniやH.pyloriあるいはウイルス(BVDV)に対してin vitroで抗微生物作用を示す乳酸菌を見出してきた。抗BVDV活性に関しては、抗ウイルス物質を産生していると考えられる乳酸菌を見出してきた。また、C.jejuniやH,pyloriの細胞への感染を阻止する乳酸菌に関してはレクチンを産生することが示唆されてきた。このような経過を踏まえ、本年度の目的、成果を以下に示す。 1、抗ウイルス活性(抗BVDV活性)の作用機序の解明昨年度、抗BVDV活性を示すEnterococcusを見出した。その作用機序を検討した結果、Enterococcusが産生する過酸化水素が抗BVDV活性に関与していることが明らかとなった。 2、抗Campylobacter活性を示す乳酸菌のni vivo感染防御に関する検討In vitroでCampylobacterの細胞への付着を阻害する乳酸菌(Lactobacillus)を用いて、鶏ヒナに対する感染防御効果を調べたが、糞便中のCampylobacter数に関して乳酸菌投与群と非投与群の間に有意な差は見られなかった。 3、抗Helicobacter活性を示す乳酸菌のクオラムセンシングの阻害作用静菌作用の一つに病原性細菌のクオラムセンシング阻害作用が挙げられる。本年度、乳酸菌のクオラムセンシング阻害作用を調べた結果、いくつかの菌株が、本作用を示した。
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