現在、日本産野生動物の多くの種が危機的な状況にある。しかも、すでに野生下で絶滅したトキやコウノトリなどでは、生息域外(飼育下)での保護増殖に頼らざるを得ないのが現状で、今後もこうした野生動物種は増加していくと見られる。そこで、本研究は、これらの飼育下繁殖した個体を野生復帰手法の確立を目的として、野生復帰に必要な技術的および社会的手法の検討を行うものである。 今年度は、以下の研究を実施し、一定の成果を得た。 1.野生復帰技術、とくに野生化に欠かせない採食や繁殖の行動に関わる訓練技術に注目して、わが国で実施されているトキおよびコウノトリにおける事例のデータを収集し、解析を開始した。とくに、今年度は、10月にトキの野生復帰が初めて実施されたことから、現地での実施状況を調査し、また関係者のヒアリングを行なった。 2.2008年1月に東京都小笠原村においてアカガシラカラスバトを対象に実施したPHVAワークショップの行動計画書を完成させ、それぞれの行動計画について実効性の検討を行なった。 3.わが国の絶滅危惧種(鳥類・哺乳類)を対象に、海外事例を参考に生息域外保全が今後必要となる種の選定手法やPHVAプロセスの適用方法などを検討した。
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