研究概要 |
本研究では、我が国の採卵養鶏において現在も多く採用されているバタリーケージと、巣箱・砂浴び場・止まり木を設置した福祉ケージそれぞれ2つのグループサイズに加えて、平飼鶏舎とそれに野外運動場を付設した鶏舎の合計6つのシステムに採卵鶏を収容し、約1年にわたって行動および生理反応を定期的に記録するとともに、生産性および健康性の観点からも評価し、多面的に比較を行った。平成19年度における、各システム導入直後の比較にひき続き、平成20年度には産卵ピーク以降の約1年間の観察を行った。 各システムにおける鶏の行動、生理・免疫反応および生産性について比較した結果から、動物の反応をベースにして6システムを評価した。また、国内外の鶏の福祉に関する文献から、福祉レベルを評価するために測定・観察すべき項目を洗い出し、それらを「5つの自由」の観点から分類して新たな評価法を試作し、その評価を従来の評価法と比較し、その有用性を確認した上で各システム総合的に評価した。その結果、5羽を収容した小型福祉ケージが、ケージの経済的および衛生的利点を維持しつつも,鶏の行動の自由も比較的保証できる優れたシステムであることを明らかにした。しかし、砂浴び場等の資源が社会の順位の高い個体に優先的に使用され、それに伴い資源を巡る敵対行動が見られた。そこで、それら資源をケージの左右2カ所に分散した改良福祉ケージを考案し、そこに改めて新個体を導入し、そこでの結果についても検討を加えた結果、その有効性を確認し、新たな飼育システムとして提案した。
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