昨年度までの神津牧場における自動撮影カメラによる調査から、牧草地へ高頻度で出没していたニホンジカ(以下シカ)を対象にスポットライトセンサス法ならびに糞塊法を用いてシカによる牧草地利用の季節的・空間的利用実態を調査し、加えてケージ内外差法を用いてシカによる牧草被害量を測定した。その結果、シカによる牧草地への出没は春と秋に多く、夏に減少する季節変動を示した。シカによる牧草被害量も夏に少なく春と秋に多い季節変動を示すものの、シカ出没頭数との相関関係は認められなかった。また、牧区単位でのシカの糞塊密度の変異はシカによる牧草被害量とは対応していなかったが、シカによる牧草被害量は牧草現存量と有意な相関関係が認められ、牧草現存量がシカによる牧草被害の空間変異を説明する要因と考えられた。 神津牧場において牧場内に設置した自動撮影カメラによる調査および同牧場内の肥育牛舎飼槽脇でのタイムラプスビデオ撮影による盗食行動調査を昨年度から継続実施した。その結果、12種の哺乳類の生息を牧場内で確認し、そのうち、イノシシ、タヌキ、キツネのみで盗食が確認された。イノシシの盜食行動は季節性と日周性において牧場内での活動パターンと一致したのに対し、タヌキの盜食行動は季節性において牧場内の活動パターンとは異なり、冬季に多く夏季に少ない傾向を示した。さらに同所で、牛舎周囲に電気柵を設置し、電気柵設置期間(3回)と非設置期間(3回)を設定して電気柵による盗食行動抑止効果をタイムラプスビデオ撮影により評価するためのデータ取得を実施した。 近中四農研大田研究拠点内の牛舎で盗食していたタヌキを捕獲し、BI(生体インピーダンス)計により体脂肪を測定し、個体の栄養状態を5段階で評価できることを実証した。さらに、防護柵の設計に必要なタヌキの運動能力、行動様式を明らかにするための試験施設を近中四農研大田研究拠点内に製作した。
|