野生動物によるウシ用配合飼料の盗食が確認されている群馬県の神津牧場において、牛舎の外周を電気柵で囲み、電気柵設置時と撤去時における野生動物の出没状況をビデオカメラでモニタリングし、電気柵設置による防除効果を評価した。その結果、電気柵設置により、イノシシ、タヌキ、キツネの出没頻度は減少し、電気柵による防除効果が確認された。一方、積雪後にイノシシによる電気柵内への侵入頻度が急増しており、積雪時の漏電対策が防除効果を維持する上で重要となることが示唆された。 濃厚飼料の盗食が野生動物の栄養状態に及ぼす影響を評価するため、神津牧場、島根県大田市、島根県知夫村の3箇所で捕獲した42頭のタヌキを用いて、外部計測ならびに胎児と胎盤痕による繁殖状況の確認を実施し、盗食の有無とBMI(外部計測から算出した肥満度)による栄養状態や繁殖状況との関係を解析した。その結果、盗食個体の平均BMIは、盗食していない個体や野生個体で確認されている文献値より顕著に高く、飼育下で飽食状態にあった個体の値に匹敵した。盗食していたメス個体の繁殖率は100%であり、高い繁殖状態が維持されていた。以上の結果から、タヌキによる濃厚飼料の盗食は栄養状態および繁殖状態を高め、個体数増加の一因となることが明らかとなった。
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