研究概要 |
ウシ骨格筋への持続的低周波電気刺激(CLFS)は, 筋線維型にFast-to-Slow変化を誘導する。この時, 筋線維型変移部位ではミオスタチン発現は減少するが, レセプターおよびインヒビターの発現には変動は見られなかった。CLFSはミオスタチンの発現にのみ影響を及ぼすことが明らかとなった。筋分化や筋肥大への抑制作用を持つミオスタチンの発現減弱によって, 筋線維型変移の環境が誘導され, 変移の進行を促進するものと考えられる。 CLFSによって筋線維型変移が起きた部位では, 筋線維間に多数の細胞核が観察され, 筋衛星細胞の活性化の他に, 外来の細胞が筋原細胞となって筋線維に融合し, 筋線維型変移に介入することが示唆された。このことから, 単離筋線維における筋衛星細胞の解析において外来の筋原細胞の介入を判別することが極めて困難である。筋線維単離法によって筋衛星細胞の動態を解析するためには, 種々の外来筋原細胞の識別法を考案する必要がある。 筋形成過程において, 筋細胞からケモカインが産生され, ミオスタチンはケモカイン発現を亢進させる方向に作用することが明らかとなった。一方, CLFSによってミオスタチン発現が減少することから, 筋線維型移行過程ではケモカイン発現は抑制されると考えられ, 炎症性反応を抑制した状態で, 筋線維のリモデリングが進行していることが示唆された。 CLFSによる筋線維型変移は, 筋衛星細胞の分裂増殖あるいは外来筋原細胞の介入によって筋線維に融合する細胞が増えることで, 進行していくものと考えられる。本研究のCLFS条件では電気刺激の伝導が運動神経を経由するものではないため, 刺激の効果がランダムに生じる。腰最長筋という大きな筋での変移部位を3次元的に見出すためには, さらに手法の開発が必要である。
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