1)IRSとDGKζとの結合様式の解明 IRS-1、IRS-2の種々のdeletion seriesを作製し、全長DGKζとともにHEK293細胞に共発現させ、免疫沈降法によってDGKζとの結合を検出した。その結果、DGKζはIRS-1の443a.a.から662a.a.の領域と結合することが明らかとなった。一方で、IRS-2との結合は確認できなかった。この結果からIRS-1とIRS-2では異なる機構で結合していることが明らかとなった。また、IRS-1とはインスリン刺激なしでも結合していたため、IRSのチロシンリン酸化を介さない機構で結合していることが明らかとなった。 2)DGKζノックダウンによるインスリンシグナル、糖取り込み量に及ぼす影響の解析 3T3-L1 adipocytesにおいて、electroporationによりDKGζをノックダウンした。まず初めに、糖取り込み量に及ぼすDGKζノックダウンの影響を調べたところ、インスリン非依存的な糖取り込み量に変化は認められないが、インスリン依存的な糖取り込み量が有意に減少していた。そこでDGKζのノックダウンがインスリン依存的なインスリンシグナル分子の活性化に及ぼす影響を調べた。その結果、DGKζをノックダウンしてもインスリン依存的なIRS-1、IRS-2のチロシンリン酸化量、IRS-1、IRS-2と結合するp85量、Aktの活性化、Erkの活性化、GLUT4の細胞膜移行に必須と考えられているAS160のリン酸化量に変化が認められなかった。AS160リン酸化量を反映して、GLUT4の細胞膜移行量にも変化が見られなかった。このことから、DGKζのノックダウンはGLUT4の細胞膜移行には変化を与えず、GLUT4の細胞膜上での活性化を阻害していることが示唆された。また、DGKζのノックダウンはインスリンシグナルに影響を与えなかったことから、DGKζはGLUT4の活性化に関わる新たなインスリンシグナルを伝達している可能性が強く示唆された。
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