1)IRSとDGKζとの結合様式の解明 IRS-1、IRS-2の種々のdeletion seriesとGSTとの融合タンパク質を大腸菌内で発現・精製した。それとは別に全長DGKζを293T内で発現させ、pull-down assayによってDGKζとの結合を検出した。その結果、DGKζはIRS-1の224-861a.a.と結合することが明らかとなった。さらに逆にDGKζをGSTと融合させたタンパク質を大腸菌内で発現・精製し、IRS-1を293T内で発現させ、同様にpull-down assayを行うと、結合が全く検出できなかった。両方のタンパク質を293Tで発現させた、共免疫沈降では二つのタンパク質の結合は検出されたことから、DGKζが大腸菌では行われない翻訳後修飾が細胞内でなされ、その修飾が結合に必須であることが示唆された。 2)DGKζノックダウンによるインスリンシグナル、糖取り込み量に及ぼす影響の解析 昨年までに3T3-L1 adipocytesにおいて、electroporationによりDKGζをノックダウンすると、インスリン非依存的な糖取り込み量に変化は認められないが、インスリン依存的な糖取り込み量が有意に減少すること、さらにインスリン依存的なインスリンシグナル分子の活性化には全く影響しないことを明らかにした。そこで本年度はDGKζの活性を阻害する阻害剤を用いて、インスリン依存的な糖取り込み量、インスリンシグナルの活性化に与える影響を調べた。その結果、DGKζの活性阻害によってインスリン依存的な糖取り込みが促進されることが明らかとなった。また、DGKζ活性を阻害してもインスリン依存的なIRS-1、IRS-2のチロシンリン酸化量、IRS-1、IRS-2と結合するp85量、Aktの活性化、Erkの活性化に変化が認められなかった。一方で、糖取り込み担体であるGLUT4の細胞膜移行はイシスリン非依存的に促進されており、DGK活性はGLUT4の細胞膜移行を阻害していることが明らかとなった。このように複雑な機構によってこれまでに知られているインスリンシグナルとは関係ない新規シグナルを介してDGKζはインスリン依存的な糖取り込みを制御していることが明らかとなった。
|