研究概要 |
鳥類におけるトランスジェニックの作出には非ウィルス法として、種々のほうほうが試みられているが成功率は極めて低い。よって本研究は、これまで鳥類では行われたことのない細胞質内精子顕微注射法(Intracytoplasmic Sperm Injection, ICSI)を用いた遺伝子導入法を試みた。外来遺伝子としてGreen Fluorescent Protein (GFP)を単一射出精子とPLCzeta cRNAと同時に注入し、ウズラ胚にGFPを発現させることを目的とした。ベクター・外来遺伝子は、pCX-EGFPプラスミドを使用し60μg/ml PLCzeta cRNAをインジェクションピペットに吸入した後、同じインジェクションピペットへGFP-射出精子を吸入する。顕微注入した卵子は、Onoらの方法(1994,2001)に従って、DMEM入り20mlプラスチックカップ中で41.5℃、5%CO_2条件のもと、24時間の体外培養を行ない(System Q1a)、更に48時間のニワトリ水溶性卵白で満たしたウズラホスト卵殻を用いた追加体外培養を37.5℃の条件で行なった。さらにSystem Q2では、30分のインターバル、90度のアングルの条件のもとで転卵した。顕微注入後、計72時間体外培養したウズラ卵子は、蛍光実体顕微鏡(Olympus SZX 12)を用いて観察した。System Q1およびQ2の体外培養72時間後、7個の卵子が胚盤葉発生しそのうち6個が外来遺伝子GFPを胚盤葉で発現していることが観察できた。さらに外来遺伝子がホストウズラ染色体に組み込まれているかを胚盤葉DNAを用いてPCR法で検討した結果、GFP遺伝子は6個の胚盤葉DNAの内3個に増幅が観察された。したがって、PLCzeta cRNA注射と同時に本ICSIによる遺伝子導入法が新しいトランスジェニックトリの作出に道を開くものとして期待される。
|