【目的】本研究では、PGFによる黄体退行のメカニズムを明らかにするために、PGFのウシ黄体由血管内皮細胞(LEC)におけるROS発生刺激作用について検討した。 1) LECにおける-酸化窒素合成酵素(iNOSおよびeNOS)の発現に及ぼすPGFの影響ウシ黄体組織ならびに培養LECにおけるPGFレセプター発現を免疫細胞化学的による確認した。培養LECにおけるiNOSおよびeNOSのmRNAならびにタンパク質発現量とともにNOS活性に及ぼすPGFの影響を調べたところ、PGFは培養LECのeNOS mRNA およびタンパク質の発現量に影響を及ぼさなかったが、iNOS mRNAおよびタンパク質発現ならびににNOS活性を有意に増加させた。 2) LECにおける活性酸素分解酵素(SOD)に及ぼすPGF、H2O2およびNONOateの影響 本研究ではPGFの黄体退行機構におけるPGFとROSの関係を明らかにする目的で、LECにPGF、過酸化水素(H2O2)およびNOのドナーであるNONOateを添加し、さらに2または24時間培養した後SOD mRNAおよびタンパク質発現ならびにSOD活性を調べた。PGF、H2O2およびNONOate添加2時間後のLECにおいてSOD mRNAおよびタンパク質の発現量ならびに活性が有意に増加した。一方、PGF、H2O2およびNONOate添加24時間後のLECではSOD発現量を有意に減少した。さらに、PGF産生に及ぼすH2O2、NONOateおよびSODの影響を検討した結果、ROSおよびSODはPGF産生を有意に刺激した。 本研究の結果から考えると、子宮から分泌されるPGFはLECのNO合成を刺激することにより黄体退行を促進する可能性が示された。さらに、PGFおよびROSはLECのSOD発現と活性を抑制することによって細胞内ROSが蓄積され、黄体細胞のアポトーシスを誘導することが示唆された。また、ROSはLECのPGF分泌を刺激することから、LECにおいてPGFとROSの間にはポジティブフィードバック機構が存在し黄体退行を促進することが示唆された。
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