Oct-3/4遺伝子は未分化細胞で特異的に発現するので、体細胞クローン胚におけるその発現は、移植後のドナー核が未分化状態にリプログラミングされたことを示す指標になる。そこで、蛍光遺伝子であるEGFPを結合したOct-3/4プロモーターをミニブタ体細胞に導入した後、これらを用いてクローン胚を作出した。得られた胚を胚盤胞にまで発生させ、未分化細胞であるはずの内部細胞塊におけるEGFPの発現を調べた。 本研究を遂行するために、効率的なミニブタ体細胞クローン胚の作出方法を確立した。0.2μg/mlのディメコルシンおよび20mMのスクロースで30分間処理することにより、ブタ体外成熟卵子の核突出を誘起することが可能であり、そのような突出をガラスピペットで吸引することにより、効率的に除核卵子を作出し得ることが示された。また、0.5mMのカルシウムを含む培地中で超音波を照射することにより、効率的にブタ卵子の活性化および単為発生を誘起し得ることが明らかになった。 一方、Amaxaシステムによるミニブタ体細胞への効率的な遺伝子導入法を確立した。Oct-3/4プロモーターにEGFPを結合した遺伝子を作製し、同方法を用いてクラウン系ミニブタ胎子線維芽細胞に導入した。この細胞を上記の方法で除核したブタ卵子に移植することによりクローン胚を作出し、上記の方法で活性化することにより胚盤胞にまで体外発生させた。得られた胚盤胞の一部において、内部細胞塊におけるEGFPの発現が認められた。このことから、本研究で示した方法を用いてクローン胚におけるOct-3/4遺伝子の発現を調べることにより、ミニブタ体細胞核移植の成否を非侵襲的に判定し得る可能性が示唆された。
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