鳥類の下垂体特異的転写因子Pit-1はほ乳類に存在しないPit-1γというイントロン1内より転写が始まるアイソフォームが存在する可能性が示されている。しかしながら、このアイソフォームが全ての鳥類に存在し、機能しているか否かは不明である。また、シチメンチョウのある種の個体はプロラクチン遺伝子の発現制御領域の転写開始点より1.3kbほど上流の下垂体特異的転写因子Pit-1の結合領域と考えられる領域に多型を有することが知られている。その個体においては有意に就巣行動中のプロラクチン濃度が低下する事が知られており、Pit-1のプロラクチン遺伝子に及ぼす影響が考えられて来た。従って、本年度の研究においては、該当領域の標準配列及び多型配列を含む計10種類のルシフェラーゼアッセイのためのベクターを構築し、GH3細胞に導入し、ルシフェラーゼアッセイを行なった。その結果、シチメンチョウプロラクチンプロモーターの予想Pit-1結合配列中に多型が存在する場合には有意にルシフェラーゼ発現が低下する事が明らかにされた。 また、早成性鳥類から晩成性鳥類までの鳥類においてPit-1γが発現するか否かを明らかにするためにダチョウ、オオタカ、ブンチョウ、ジュウシマツにおけるPit-1イントロン1の塩基配列を決定した。その結果、進化的に古いと考えられる早成性の鳥種ではPit-1γの翻訳に必要なメチオニンコドンが有するのに対し、晩成性鳥種ではメチオニンコドンが存在せず、また塩基の欠損も生じており、Pit-1γが存在する事が不可能な事が明らかにされた。従って、Pit-1γは早成性においてのみ存在する可能性が考えられたが、一方で発現しても翻訳されないmRNAとして存在する可能性も考えられた。
|