鳥類の下垂体特異的転写因子Pit-1はほ乳類に存在しないPit-1γというイントロン1内より転写が始まるアイソフォームが存在する可能性が示されている。しかしながら、このアイソフォームが全ての鳥類に存在し、機能しているか否かは不明である。本年度の研究としてはニワトリPit-1イントロン1内におけるPit-1γの発現制御領域を明らかにするため、ニワトリ、アヒル、ダチョウ、オオタカ、ブンチョウにおいて得られた配列より保存性が高い領域を用いてのルシフェラーゼアッセイを行い、アイソフォーム発現に重要である領域の決定を行う事を目的とした。ルシフェラーゼアッセイを行う前に5'UTRを決定する必要からニワトリPit-1遺伝子のイントロン2領域とエクソン4においてプライマーを設定し、Pit-1γの5'UTR領域の推定を行った。その結果、Pitγの5'UTRは予想されていたものより遥かに長く、当初TATAボックスと推定されていた領域はUTRであり、ATG開始コドンより上流1400塩基まではUTRである事が確認された。従って、ATG開始コドンより上流1450塩基付近に存在するTATAAATAAという配列がTATAボックスとして機能している可能性が示唆された。この結果に基づきエクソン1の終わりより650塩基程が発現制御領域と思われた。この領域を鳥類で比較すると近縁種では95%の相同性を示すものの、鳥類全体では65%ほどの相同性であり、高い類似性を示す訳でもない事が確認された。従って、相同性の高い領域が発現に関与している事が示され、全く当初の予測とは異なる結果が示された。ルシフェラーゼアッセイを該当領域で行ったが、プロモーターを挿入したプラスミドとコントロールプラスミドとでは大きな発現量の変化は認められず、Pit-1γの発現にはイントロン1のUTR以外の領域が関与している可能性が強く示唆された。
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