バベシア症を克服するためにはバベシア原虫が持つ独自の赤血球侵入分子機構を理解し、治療法・予防法の開発に繋がる重要なそのターゲット分子を同定していくことが急務となっている。本研究の目的は、未だ明らかとされていない糖鎖認識を基点としたバベシア原虫の赤血球侵入機構を分子レベルで解読しようとするものである。平成19年度では、バベシア原虫(Babesia bovis)による赤血球侵入を阻害できる糖鎖誘導体群のパネルの決定を試みた。すなわち、バベシア原虫の培養液中に様々な糖鎖誘導体(α2-3もしくはα2-6シアリルラクトース、ヘパリン、デキストラン硫酸、デキストラン、ケラタン硫酸、プロタミン硫酸、ヘパラン硫酸、フコイダン、コンドロイチン硫酸、及びヒアルロン酸)を添加し、バベシア原虫の赤血球侵入を阻害できる糖鎖誘導体群の探索・同定を行った。その結果、「α2-3シアリルラクトース、ヘパリン、デキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、フコイダン、及びコンドロイチン硫酸」がバベシア原虫の赤血球侵入を有意に介入・阻害することをつきとめた。上記糖鎖誘導体群と構造上類似した感染受容体が赤血球膜上に存在していることが示唆されたとともに、それら糖鎖誘導体は未だ治療薬のないバベシア症の新規薬剤候補となりうることも期待された。上記の知見をもとに、次年度もバベシア原虫による赤血球侵入機構を分子レベルで解明していく予定である。
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