研究課題
バベシア症を克服するためにはバベシア原虫が持つ独自の赤血球侵入分子機構を理解し、治療法・予防法の開発に繋がる重要なそのターゲット分子を同定していくことが急務となっている。本研究の目的は、未だ明らかとされていない糖鎖認識を基点としたバベシア原虫の赤血球侵入機構を分子レベルで解読しようとするものである。平成20年度までに、"α2-3シアリルラクトース、ヘパリン、デキストラン硫酸、ヘパラン硫酸、フコイダン、及びコンドロイチン硫酸"がバベシア原虫の赤血球侵入を有意に介入し阻害することをつきとめた。また、シアル酸が欠如した赤血球にはバベシア原虫は侵入できないことも明らかとなった。これらの成果より、上記糖鎖誘導体群と構造上類似しだシアル酸やヘパラン硫酸様多糖"が赤血球膜上の感染受容体として重要な役割を果たしていることが示唆された。また、原虫リガンド分子と感染受容体の特異相互作用を介入できるそれら糖鎖誘導体群は、未だ治療薬のないバベシア症の新規薬剤の候補となりうることも期待された。しかしながら、シアル酸が欠如した赤血球にも侵入できるバベシア原虫株が分離できたことから、バベシア原虫は環境に応じて感染受容体を使い分ける巧みな赤血球侵入の適応能力を持つことが示された。上記の知見をもとに、最終年度もバベシア原虫による赤血球侵入機構を分子レベルで解明していく予定である。
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