本研究はTGF-βスーパーファミリー結合蛋白質であるフォリスタチンファミリー蛋白質の性状解析と、そのリガンド結合部位であると考えられているフォリスタチンドメインの構造を基にしたTGF-βスーパーファミリー阻害剤の開発を目的としている。フォリスタチンファミリーに属するフォリスタチンとFLRG蛋白質は、それぞれ3個および2個のフォリスタチンドメインをその分子内に含む。昨年度はフォリスタチンとFLRGの各フォリスタチンドメインを大腸菌で発現させ、TGF-βスーパーファミリーに属するアクチビン、BMP7およびマイオスタチンと各フォリスタチンドメインとの結合をリガンドブロット法により検討し、フォリスタチンとFLRGは両者とも主に第二フォリスタチンドメインを介してこれらのリガンドに結合していることを明らかにした。そこで、本年度はFLRGの第二フォリスタチンドメインを大腸菌で発現させ、その高純度精製品を培養細胞に添加してアクチビンの作用抑制効果を検討した。FLRGの第二フォリスタチンドメインとC末端の酸性領域を含むもの、前者から酸性領域を欠いたもの、また、それぞれのN末端に塩基性ペプチドであるポリアルギニンを付加したものを作製し、アクチビン反応性レポーター遺伝子を一過性に導入したCHO細胞にアクチビンと各種FLRG部分蛋白質を作用させ、ルシフェラーゼアッセイにより、その活性を検討した。その結果、FLRGの第二フオリスタチンドメインはアクチビンの活性を抑制せず、むしろその活性を促進する効果が確認され、アクチビンへの結合活性以外の性質がアクチビンの生物活性抑制に必要であることが示唆された。
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