研究概要 |
従来全く不明であった消化管内の常在細菌コロニーの増殖に対する調節機構を明らかにすることを目的として研究を行い,以下の成果を得た。 1.小腸全長で上皮細胞の細胞寿命には大きな差異がないが,上皮細胞の移動速度を遅くすることによって,小腸後位における常在細菌の上皮細胞への定着を促進するとともに,常在細菌コロニーが粘膜の深い隙間に増殖する場合には上皮細胞の移動速度を速くすることによって増殖を阻止するという常在細菌コロニーの調節機構を明らかにし,論文公表をしつつある。 2.小腸では,腸絨毛や濾胞被蓋上皮の頂点を基点として常在細菌が上皮細胞に接着するが,上皮細胞は微細線維の再構成による物理的排除と抗菌物質の分泌による化学的排除を併用して常在細菌の接着を排除する超微形態学的なメカニズムを明らかにし,論文公表した。 3.小腸内の抗原情報をモニタリングしていると考えられる濾胞被蓋上皮中のM細胞の分化過程を超微形態学的に明らかにするとともに,濾胞被蓋上皮におけるアポトーシスの発現が,一般の腸絨毛の上皮細胞に比べて極めて遅れ,このことが抗原を取り込むM細胞の分化と再分化に重要であることを明らかにし,共に論文公表した。 4.小腸腸絨毛の上皮におけるアポトーシスの発現機構について免疫組織化学的に検討した結果,腸陰窩直上の上皮細胞から発現するFasとFas-Lがアポトーシスを誘導し,これとほぼ同時に実行系の酵素である活性化caspase-3が出現してDNase Iが発現,やや遅れてDNAの断片化が起こるが,従来in vitroの研究で発現するとされてきたcaspase9はin vivoの腸絨毛では殆んど働かないことが明らかし,現在論文公表を準備中である。
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