研究概要 |
本研究の目的は,消化管炎症性腸疾患に伴うPAR-2脱感作の分子メカニズムを解明することにある。PAR-2の消化管炎症における生理的・病態生理的役割の詳細は解明されていないが,炎症性の疾患において,その発現ならびに機能がダイナミックに変化し,炎症と密接に関係することは示唆されている。本研究において,PAR-2脱感作機構が解明されることにより,新たな視点に立った炎症性腸疾患の創薬につながる事が期待される。今年度の研究では,デキストラン硫酸ナトリウムにより作成した実験的腸炎ラットモデルを用いて消化管での増加が確認された炎症性サイトカイン、IL-1βとTNF-α、のPAR-2脱感作における責任分子の解明と、その作用機構について明らかにすることであった。器官培養標本を用いて炎症性サイトカインIL-1βとTNF-αを3日間処置したところ,強いPAR-2機能低下とPAR-2発現減少が認められた。また,この時iNOSおよびCOX-2の発現増加が見られたことから、NO徐放性放出薬NOC-18とPGE2の直接作用を器官培養標本において検討したところ、PAR-2の脱感作は阻害された。さらに、サイトカインによるPAR-2脱感作ならびにiNOSとCOX-2の誘導は、NF-κB阻害薬であるBMS-345541の同時措置により解除された。これらの結果より,炎症性腸炎におけるPAR-2脱感作機構は,炎症性サイトカインによるNF-κBの活性化を介して,iNOSおよびCOX-2が誘導され、その結果産生されたNOとPGE2が関与していることが明らかとなった。
|