本研究の最終的な目的は、家畜・家禽由来の味蕾を単離培養し、これに味物質を添加後の味蕾構成細胞の応答反応を共焦点レーザー顕微鏡で観察することである。ニワトリ味蕾の分布については、前年度の成果として学会発表を行なった。学術論文の成果は本年度に下記記載のような成果を得ることができた。この実体顕微鏡で確認できるようになった、味蕾を採取し培養系で単離する技術の確立を図ることが本年度の目的であり、これが達成されれば画像化技術を用いてその味覚受容反応の可視化がもたらされる。マイクロマニピュレータを用いて吸引採取した味蕾様細胞塊の単離培養系の確立が可能となった。同様にして得られたラット味蕾様細胞塊に対する味蕾特異的G-タンパク質のガストデューシン抗体を用いた免疫組織化学的手法により、細胞塊の一部の細胞が明瞭な陽性反応を示したことから、これら細胞塊が味蕾であることが明らかになった。現在までに、ニワトリ味蕾に対するマーカー抗体が存在しないことから、この単離培養系が確立された味蕾様細胞塊が間違いなく味蕾であることを証明する必要が生じた。そこで、分子生物学的手法を用いて、ガストデューシン予想配列を作製し、味蕾が存在する口腔内組織と他の臓器を用いてRT-PCR法を用いてその存在について検討したところ、口腔内上皮においてのみ明瞭なバンドが確認できた。この方法を味蕾様細胞塊について同様に行なったところ、ガストデューシンの存在を証明する明瞭なバンドが得られた。すなわち、この単離培養系として確立された細胞塊が間違いなく味蕾であることが証明された。この成果は学会において発表を行ない、また学術論文でもその成果の一部を発表することができた。今後このニワトリ味蕾を用いて味覚応答反応を検証する作業に移行する予定である。
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