本研究では、我々が発見した新規アクアポリン(AQP)分子種であるAQP11に関連する分子基盤を明確にし、その機能異常がどのような分子メカニズムを通して細胞死を伴う嚢胞を形成するのかを解明することを目的とする。平成20年度では、(1)平成19年度に同定したAQP11のテトラマー形成に必要な99番目のアスパラギン残基および101番目のシステイン残基のテトラマー形成における分子メカニズムの解析、(2)平成19年度に同定したAQP11結合タンパク質の生物学的意義、そして(3)AQP11と小胞体ストレス、あるいは嚢胞形成関連分子とのインターアクションについて解析した。その結果(1)99番目のアスパラギン残基および101番目のシステイン残基は、AQP11のC末端側の3次元構造を決定する上で重要なアミノ酸残基で、それらのアミノ酸残基が変異すると、AQP11のC末端側の3次元構造が変化するためにテトラマーを形成できない可能性、(2)同じ近位尿細管細胞に発現していて、AQP11結合タンパク質として見出したAQP1は、AQP11によってその細胞膜への局在が調節されていること、(3)嚢胞形成に重要な分子で、小胞体ストレスとの関連性が最近報告された分子とAQP11がインターアクションすることなどを見出した。 なお本研究の一環として、その発症が小胞体ストレスと深くかかわっている疾患である急性腎不全の新規治療薬に関する研究、また、急性腎不全の発症と体質との関連性について調べた研究成果を国際雑誌に発表した。
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