研究課題
基盤研究(C)
(背景)鳥類の発生において卵白タンパク質はアミノ酸供給源として重要な役割を果たす以外、外的微生物からの侵入を防御する働きを持っている。卵白の主要タンパク質・オボアルブミンは構造的にはセルピンファミリーに属しているが、プロテアーゼ阻害作用は有していないためその生理機能は不明である。本研究ではオボアルブミンの機能の解明を目的に、ニワトリ胚培養系を使って、オボアルブミンの胚への供給をブロックすることで形態形成に及ぼす影響を調べた。(方法)ステージ7胚をペーパーリング法を用いて1%寒天培地上で24時間培養した。遺伝子発現はISH、WISH、リアルタイムPCR、マイクロアレイで解析した。(結果)神経管閉鎖前胚ではオボアルブミンブロックにより、神経管閉鎖が阻害され、神経管欠損(NTD)胚となった。体節形成などにも異常が生じたことからオボアルブミンが形態形成に重要な働きを有することが考えられた。オボアルブミンブロック胚では神経管では細胞増殖の阻害とアポトーシス細胞の減少が見られ、一方、神経上皮細胞は過剰に増殖しており、表皮上皮組織の形成が促進していた。ブロック胚では形態形成因子であるfgf8およびslugの発現が低下しており、Pax3およびBMP4が上昇していた。マイクロアレイ解析の結果、正常胚とオボアルブミンブロック胚では約1,100種の遺伝子に発現変化が観察され、細胞コミュニケーションおよび接着のシグナル伝達系の発現低下が顕著に見られ、その他、いくつかの形態形成に関わる遺伝子のシグナル伝達系にも異常な発現が観察された。(結論)これまで不明であったオボアルブミンの生理機能について神経管閉鎖などの形態形成に重要な働きを有することが明らかになった。オボアルブミンはfgf8のような中枢神経形成に関わる因子と協調してBMPの作用を抑制することによって上皮組織細胞の増殖を抑え、神経細胞への分化を促進すると考えられる。よってオボアルブミンの供給を抑制すると神経細胞への分化が阻害され、神経細胞と上皮細胞のバランスが崩れ、NTDになると推定された。(展望)ヒトで見られるNTD症は葉酸やイノシトールである程度防止することが出来る。しかし、その原因は不明であり、どのような遺伝子によるものかも特定されていない。ヒトにもオボアルブミンに似たセルピン系のタンパク質の存在も知られており、この遺伝子の変異あるいはタンパク質の機能不全により発生する可能がある。今後、オボアルブミンと形態形成因子との相互作用およびヒトホモログオボアルブミンの同定と機能解明を進め、NTDの発症メカニズムを明らかに出来る。
すべて 2009 2008 2007
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (1件)
Research in Microbiology 160
ページ: 809-816
Food Science & Technology Research 15
ページ: 283-292
Meat Science 82
ページ: 260-265
J Food Sci 74
ページ: 68-72
J. Food Sci 73(2)
ページ: 84-91
Asian-Aust. J. Anim. Sci 21(4)
ページ: 596-602
日本食品科学工学会誌 55
ページ: 612-618
日本きのこ学会会誌 16
Biochim Biophys Acta 1770
ページ: 5-11
J Agric Food Chem 55(6)
ページ: 2392-2398