1)成熟脂肪細胞由来するDFATから分化誘導した神経系細胞を移植し、体内での分化および組織化の状況を調べるに有効なDFATを樹立することを目的として、GFPマウス成熟脂肪細胞からDFATの樹立を試みるとともに、移植後におけるDFAT-GFPがトレースできるかを検討した。皮下脂肪組織を酵素処理およびフィルトレーションして採取した脂肪細胞画分をFACS解析した結果、すべてが成熟脂肪細胞であった。単離した成熟脂肪細胞を天井培養すると、細胞質内に小さな脂肪滴を複数有する多胞性脂肪細胞あるいは線維芽様細胞へと形態変化し、活発に増殖した。分化誘導7日後、ほとんどの脱分化脂肪細胞(DFAT-GFP)が成熟脂肪細胞へと再分化した。DFAT-GFPの発光、増殖および分化能力は継代を繰り返しても維持された。以上の結果から、DFAT-GFPは均一な増殖および分化能力をもつ前駆脂肪細胞株であることが示された。また、DFAT-GFPは移植後においてもGFPの発光が維持されたことから、DFAT-GFP由来の神経系細胞の体内における分化および組織化の解明に有効なツールになると考えられる。 2)1)で樹立したGFPマウス成熟脂肪細胞由来のDFAT-GFPが胚葉を越えて神経系細胞へ分化転換するかを明らかにする目的で行なった。その結果、DFAT-GFPは分化誘導4時間後に神経細胞様の形態に変化した。さらに、Nestin、NSE、βIIItubulin、NF、S100およびCNPaseなどの神経細胞特異的遺伝子およびタンパク質の発現も確認された。また、神経分化長期誘導法により、神経様の細胞が増加し、神経突起を伸長させ、24時間培養可能であることが明らかとなった。以上の結果から、成熟脂肪細胞に由来するDFAT-GFPは神経系細胞へ分化転換することが示された。
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