研究概要 |
1.チンパンジーおよびインドゾウから得られた新種の記載と系統学的検討 チンパンジーの新鮮糞便より得られた新種の消化管内繊毛虫について記載を行うとともに鍍銀法による系統学的解析を行った。その結果、本種は極めて特異な形態をもつにもかかわらず、系統学的には他の単胃草食動物の大腸に見られるブレファロコリス科に属するべきものと判定された。インドゾウから得られた、ゾウ固有であるPolydiniella属繊毛虫についても、鍍銀染色による比較形態学から、本属はウマの大腸内における優占種であるCycloposthium属に比較的近いことが判明した。 2.草食動物消化管内原虫からの遺伝子の抽出と分子系統樹の作成 未だ配列が報告されていないBundleia, Blepharocorys, Triadinium, Spirodinium, Polydiniellaの各属繊毛虫について、そのSSU rDNAの遺伝子配列を決定し、PAUPを用いて系統分岐図を作成した。その結果、反芻動物第一胃内に見られるOphryoscolecidae, Isotrichidae,単胃草食動物の大腸に生息するBuetschliidae, Spirodiniidae繊毛虫は単系統を示し、鍍銀法による形態学的系統解析の結果とよく一致したが、Blepharocorythidaeなど一部のグループは単系統ではなく、多系統群となった。これについては、今後さらに多種についての遺伝子解析および比較形態学的検討による詳細な解析が必要であると考えられた。 3.草食動物消化管内原虫のデータベース化 各種反芻動物、ウマ、カバ、サイ、ゾウ、ゴリラ・チンパンジー、バク、草食性有袋類、カピバラ、イボイノシシ、ハイラックスの消化管内繊毛虫について、著者らの業績を含む約500編の文献を検索し、シノニム関連を考察しつつ、449種をデータベース化した。各種の顕微鏡写真については、およそ8割のものについて入手し、ファイル化した。現在さらに蒐集中である。
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