研究概要 |
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)はワクチン開発が未だ成功しておらず,効果的な治療法も確立されていない疾患で,一度発症すると致死的な経過をたどる. 近年,転写RNAのうち,約53%ものRNAが蛋白質をコードしないノンコーディングRNA(ncRNA)であることが明らかとなった.この中にはRNA干渉に関わるsiRNA,miRNAも存在する.ncRNAは発生,分化,細胞増殖制御に重要な役割を担っていることが明らかとなっており,細胞内在性RNAiによってある種のウイルスの複製が抑制されることが示されている.このシステムは免疫系・インターフェロン系を介さない新たな生体防御系と位置づけられる.さらにウイルスがコードしているmiRNAも発見され,直接的あるいは間接的にウイルス自身の遺伝子複製を調節していることも報告されている.すなわち,ある種のウイルス因子は,細胞のRNA干渉作用を巧みに阻害し,ウイルスを効率的に増殖あるいは持続感染状態に維持できるよう調節しているものと考えられる. このため,ウイルス複製制御に影響を与える細胞内在性あるいはウイルス由来の因子(siRNAおよびmiRNAあるいはそれらを不活性化する因子)を分離・同定し,ウイルス複製制御機構を解析することで病原性発現機構を明らかにすることを目的とした.平成19年度はルシフェラーゼ遺伝子発現組換えFIPウイルスの作成を行った.現在,細胞およびウイルス由来のmiRNA・siRNAライブラリーの作成と発現細胞のクローニングをおこなっている.
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