研究概要 |
本研究目的である『多機能マスト細胞の戦略的分化誘導と免疫応答における調整機構の包括的解析』を明らかにする目的で、本年度は自然免疫の中心的な受容体であるTLR4を介したLPS刺激に対するマスト細胞の挙動を検討した。LPS刺激によってBMMC(マウス骨髄由来培養マスト細胞)で発現が著しく増加するmRNAはIL-1β,IL-4,IL-6,IL-9,IL-13,TNFα,MCP-1,MIP-1であることがRT-PCRおよびリアルタイムPCRによって確認された。このうちIL-9はマスト細胞の増殖因子として機能することがRT-PCRおよびリアルタイムPCRによって確認された。このうちIL-9はマスト細胞の増殖因子として機能することが知られていることからこれに注目した。マスト細胞増殖因子として知られているIL-3,SCF,IL-9のBMMC増殖への効果を検討したところ、IL-3およびSCFはそれぞれ単独で増殖促進を示すが、IL-9は効果がなくその促進作用はIL-3およびSCFとの共培養により促進作用が見られ、特にSCFとの共培養で強く見られた。mRNAの解析によりLPS刺激によりIL-9mRNAの発現が強く見られたことから、オートクラインの可能性を検討した。はじめにIL-9レセプターの発現をmRNAおよび間接蛍光抗体法で解析したところ、ともに恒常的に強い発現が認められた。次にBMMCからのLPSによるIL-9産生量をELISA法を用いて検討したところ、IL-9の産生が見られ、その産生はIL-3存在下で最も多く見られた。以上の結果から、LPS存在下におけるマスト細胞増殖のメカニズムとして、IL-9の産生が誘導され、それは自身のIL-9受容体に結合してオートクラインが誘導される。BMMCからのIL-9産生はIL-3存在下で促進され、IL-9によるオートクラインでの増殖促進にはSCFが促進効果を示すという機構が存在することが示唆された。
|